2025年1月27日、フリーアナウンサーの生島ヒロシさんがラジオ番組の降板と芸能活動の無期限自粛を発表しました。
その理由は、重大なコンプライアンス違反があったそうです。

コンプライアンス違反ってよく聞くけど、いまいち内容が分からないんだよな~
今回はコンプライアンス違反について、実例をもとに確認していきましょう!
コンプライアンス違反の定義

コンプライアンス違反は、「社会的倫理観や規範に違反する行為」「不正、不平等な業務を意図的に遂行する行為」を意味します。
具体的には、法律違反(贈収賄、インサイダー取引、談合など)、社内規定違反(不正経理、セクハラ・パワハラ、情報漏洩など)、社会的規範違反(環境汚染、人権侵害、虚偽広告など)などが挙げられます。
このような行為を起こしてしまうと、信頼の低下や企業の経営破綻にまで発展することもあります。
法令遵守という意味でのコンプライアンスは、企業経営において非常に重要な概念なのです。
企業で発生したコンプライアンス違反事例

企業で実際に発生したコンプライアンス違反の事例を紹介します。
中古車販売店による修理費水増し

株式会社ビッグモーターによる、修理費水増しの事例です。
ビッグモーターでは、顧客から修理のために預かった自動車にゴルフボールをぶつけるなどして故意に傷をつけ、損害保険金を水増し請求していました。
水増しされた保険金は損害保険会社が支払うこととなるものの、顧客は自身の車に本来なかったはずの傷がつけられるなどの不利益を被ることになります。
なお、ビッグモーターには大手損害保険会社が複数の出向者を出していました。
そのため、不正を認識したことが疑われる損保ジャパンなどの損害保険会社にも、金融庁からの立ち入り検査が入る事態まで発展しました。
YouTuberの個人情報を私的利用

ソフトバンクにおいて、営業担当者がYouTuberの個人情報を私的利用した事例です。
ラジオ系YouTuberのA氏に、スマホを契約しているソフトバンクの店舗から営業の電話がかかってきました。
その後、同担当者からTwitterとInstagramのDMで直接連絡が来たことで、担当者がA氏の個人情報を私的利用したことが発覚しています。
本事例は、著名人の個人情報を悪用した重大なコンプライアンス違反です。
電話番号や住所、クレジットカード情報などを取り扱う企業では、個人情報の管理に細心の注意を払う必要があります。
全国旅行支援を不正請求

旅行業界大手の日本旅行が、勤務実態のない延べ163人分の人件費約530万円を不正請求していた事例です。
日本旅行では、「全国旅行支援」の愛知県版である「いいじゃん、あいち旅キャンペーン」の運営業務を行っていました。
同社では、2022年7月からキャンペーンの運営事務局として1日10〜15人が勤務する取り決めを行っていましたが、その中で以下のような不正行為を行っています。
- 勤務実態のないスタッフのタイムカードを作成する
- より人件費の安い外部派遣会社に業務を委託する
大手企業の信頼を失墜させる、重大なコンプライアンス違反の事例です。
NTT子会社による顧客情報漏洩

2023年10月に発生した、NTT子会社による顧客情報の持ち出し事例です。
西日本電信電話株式会社(NTT西日本)の子会社である株式会社NTTマーケティングアクトProCXでは、コールセンター業務を行っていました。
その際、コールセンターシステムの運用業務を担うNTTビジネスソリューションズ株式会社の元派遣社員が、個人情報約900万件を不正に持ち出しています。
個人情報の中には、インターネット通信サービスの契約者の情報、福井市と鯖江市で特定健診の対象となった市民の個人情報などが含まれていました。
データへの不正なアクセスは2013年7月ごろから10年近くに渡っており、元派遣社員はデータ管理サーバーから直接データをダウンロードしていました。
セキュリティ対策が不十分だったことにより、長期間に及ぶ情報流出を招いた事例です。
上司からのパワハラでうつ病を発症

住友林業において、長時間労働と上司からのパワーハラスメントを原因とした自殺が労災認定された事例です。
本事例では、上司が新入社員に対して「お前」と呼んだり、同僚の前で叱責したりする行為を行っていました。
こうした心理的負荷に加え、1ヶ月あたりの時間外労働時間は約100時間に達しています。
この新入社員は2016年1月に自殺しており、2024年7月には福岡地裁からパワーハラスメントと自殺の因果関係を認める判決が出ました。
アルバイトによる悪ふざけがSNS上で拡散・炎上

2024年、すかいらーくホールディングスが運営するしゃぶ葉の店内にて、同店のアルバイトが撮影した悪ふざけの動画がSNS上で拡散され、炎上した事例です。
本事例では、アルバイトスタッフが別の店員から羽交い締めにされ、ホイップクリームを口に流し込まれる動画をSNS上へ投稿しました。
SNS上では批判が集中し、すかいらーくホールディングスはプレスリリースやJ-CASTを通じて謝罪する事態となっています。
ホンダによる品質不正の事例

2024年6月、ホンダが過去に生産していた4輪車の認証試験において不正を行っていたことを公表した事例です。
ホンダは、4輪車の形式指定申請を行う認証試験を実施する際、試験条件の虚偽記載を行っていました。
コンパクトカーの「FIT」やミニバンの「Odyssey」など、対象車種はのべ325万台に上っています。
ホンダ社長の三部氏はこうしたコンプライアンス違反の原因を、再試験を回避したいという思いからくる「都合のいい技術的解釈」とし、社内の監査体制を強化することを発表しました。
大手銀行による個人情報の不正利用事例

2024年6月に発覚した、三菱UFJ銀行による個人情報の不正利用事例です。
本事例では、三菱UFJ銀行が証券会社に対し、顧客の内部情報を無断で共有していました。
また、同行は融資先の企業に対し、グループ内の証券会社と有価証券取引を勧誘しており、金融商品取引法などに違反する疑いが持たれています。
証券取引等監視委員会はこれを受けて、三菱UFJ銀行を含む3社に行政処分を行うように金融庁へ勧告する方向です。
金融業界ではこのほかにもコンプライアンス違反が多発しており、改めて業界体質の改革が求められています。
個人がやってしまうかもしれないコンプライアンス違反事例

コンプライアンス違反は、個人が気づかないうちに起こしてしまう可能性もあります。
ここからは、個人が発生させる可能性のあるコンプライアンス違反を3つ紹介します。
会社の設備や備品の私的利用

個人が起こしがちなコンプライアンス違反として、会社の設備や備品の私的利用が挙げられます。
企業には、仕事をする上で社員が自由に使用することのできる設備や備品があります。
これらを業務で使う分には問題ありませんが、私的利用してしまうとコンプライアンス違反になるため注意が必要です。
例えば、「会社で使用する文房具を自宅に持ち帰って使用する」といった行為は、コンプライアンス違反とみなされる可能性が高いです。
「このくらいなら問題ない」と、社員個人がつい勝手な判断をしてしまうケースが目立つため、対策が求められます。
無許可でデータのコピー・持ち出し

会社の許可を得ることなく、会社保有の個人情報や企業秘密情報などをコピーしたり、持ち出したりする行為も、コンプライアンス違反に該当します。
データのコピーや持ち出しで特に目立つのは、「社外からも業務を進めるため」といった理由で悪意なくデータを持ち出すケースです。
USBにコピーするのはもちろん、クラウド上に許可なく保存した場合などでもコンプライアンス違反とみなされます。
業務上の理由でどうしてもデータを持ち出す必要がある場合には、必ず社内のセキュリティルールに従い、必要に応じて許可を取るようにしましょう。
経費の水増し

個人が発生させがちなコンプライアンス違反として、経費の水増しも挙げられます。
例えば、経費の金額をきちんと計算せず、違う金額で経費計上してしまうといったケースです。
また、業務に関係ないものを経費計上する行為も、コンプライアンス違反に該当します。
具体的には、同僚と飲食しただけなのに、得意先の接待であると偽って経費計上するといった行為が、経費の水増しの一例です。
経費は判断基準が曖昧なことも多いため、個人の判断で違反を犯してしまうケースが後を絶ちません。

個人がやってしまうかもしれないコンプライアンス違反事例として、著作権侵害があります。社内にある情報やデータを他社の著作物であると認識せずに使用し、著作権侵害になってしまうのです。社内にある情報のうち、どの情報が他社の著作物なのか管理することで防止していく必要があります。
コンプライアンス違反による影響やリスク

企業でコンプライアンス違反が発生すると、さまざまな悪影響が発生します。
ここからは、コンプライアンス違反が発生することで生まれる悪影響やリスクを解説します。
会社の信用が落ちてしまう

企業でコンプライアンス違反が起こると、会社の信用が落ちてしまいます。
例えば製造業で品質不正が発覚した場合、「あの企業の製品は信用できないかもしれない」というネガティブなイメージがついてしまうでしょう。
自動車などの高額商品や、医薬品などの健康に関わる商材を扱っている場合には、特にこうした影響が顕著です。
社会的信用やブランドイメージの低下を防ぐためにも、コンプライアンス違反を未然に防ぐことが大切です。
損害賠償請求のリスクがある

コンプライアンス違反が発生すると、損害賠償請求のリスクが生じます。
例えばパワーハラスメントが発覚した場合、本人と企業側にそれぞれ30〜100万円程度の損害賠償が請求されるケースが多いです。
未払いの残業代などがある場合には、さらに損害賠償の額が高くなります。
特に過重労働や自殺などの人命に関わる不祥事が発生した場合、遺族から損害賠償を請求されて提訴されるリスクがあります。
コンプライアンス違反の影響が甚大な場合、経営が傾くほどの賠償金が課される可能性もあるでしょう。
刑事訴追のリスクがある

コンプライアンス違反が刑法に触れる場合、当事者が警察に逮捕され企業に家宅捜索が入ることもあります。
たとえコンプライアンス違反を社員が個人的に起こしたとしても、企業側の管理がずさんだったとみなされるケースは少なくありません。
こうした際には、企業としての管理責任が問われるリスクがあるため、注意が必要です。

上記のような事態に陥った場合、株価や社員の離職率にも悪い影響を及ぼすことがありますね。
コンプライアンス違反を防ぐ対策

コンプライアンス違反を防ぐためには、以下のような対策を徹底することが大切です。
ここからは、コンプライアンス違反を防ぐために実施しておきたい対策を解説します。
ガイドラインやポリシーの策定をする

コンプライアンス違反を防ぐためには、ガイドラインやポリシーの策定を行うのが大切です。
社内規範を示すガイドラインやポリシーを策定する策定し、策定した経緯や内容を周知しましょう。
ガイドラインを策定することで、気づかないうちに起こしてしまうコンプライアンス違反を防ぐことができます。
例えば個人情報保護に関するガイドラインの中で「情報の社外持ち出しを禁止」「やむを得ずクラウド上で管理する際には、関係部署に許可を取る」といった行動基準を示せば、社員による意図せぬ情報流出を防止できるでしょう。
社内のコンプライアンス管理体制の構築

コンプライアンス違反を防ぐためには、問題発生時に対応できる内部通報の窓口や部門を設け、責任の所在を明確にするのも重要です。
こうした窓口を設けることで透明性を確保し、コンプライアンス違反の事例に対して第三者の目線が入る体制を整えることができます。
例えばハラスメントの事案が発生した場合、周囲の人間関係を気にしてなかなか相談できない場合が多いです。
こうした際に相談窓口があれば、安心して第三者へハラスメントの被害を共有できるため、スムーズに必要な対策を講じることができます。
コンプライアンス研修の実施

コンプライアンスに関する意識を高めるため、定期的に研修を実施するのもおすすめです。
コンプライアンス研修を実施すれば、コンプライアンス遵守の重要性を改めて伝えることができます。
また、策定しているガイドラインなどがあれば、研修を通じてそれを浸透させるのも有効です。
なお研修は座学だけで学んでもらうのではなく、グループワークを含めた参加型にすると効果的です。
当事者意識を高めるためにも、受講者が主体的に参加できるような研修を実施しましょう。
また、コンプライアンスに関連する法令や規制は変更されることもあるため、定期的な研修の実施が重要です。
まとめ

コンプライアンス違反について、最新の事例を中心に紹介しました。
最近ではSNSが普及したこともあり、コンプライアンス違反の事例は瞬く間に拡散されてしまいます。
一つの不祥事が、経営を傾かせるほど大きな悪影響を与えることも珍しくありません。
こうしたリスクを低減させるためには、コンプライアンス違反を未然に防ぐことが何より大切です。
是非、コンプライアンス違反に対する理解を改めて深め、コンプライアンス違反が発生しない体質を作っていきましょう。
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